2016年御翼11月号その1

                                         

原子力エネルギーを開発する前に 

 世界の産業基盤はトーマス・エジソン(1847~1931)の発明によってできた。そんなエジソンは、「人間と機械の関係」について、「来たるべき機械文明の世界では、人間が強い精神力を維持しなければ、人間が機械に翻弄されてしまい、主客転倒が起こり、人類が破滅に向かう事態もあり得る」と言っている。エジソンはクリスチャンではなかったが、聖書はよく読み、夫人はクリスチャンで毎週教会に通っていた。スポーツやゲームには関心がなく、マイナ夫人が奏でるピアノを聴いたり、讃美歌やクリスマス・ソングが大好きで、一緒によく歌った。教会活動に熱心であった妻のマイナからは日曜ごとに礼拝に出席するように勧められていたが、耳が聞こえないことを理由に断り続けた。それでも、苦心している発明が完成するように神様にお祈りしてきてくれ、とマイナにはよく頼んでいたという。彼が言う「強い精神力」とは、神への信仰によって善悪を判断し、決断することであるべきである。
 当時の彼の日記に、戦争や平和に関する個所がいくつかある。「将来の戦争をなくすには、原子力を応用した人類の生存を脅かすような兵器が開発されても、誰もそれを使えない状況が生まれることが条件となるであろう。私は原子力に強い関心を抱いて、初期の実験を始めている。これが成功し、これまで存在しない強力な兵器が誕生すれば、戦争を抑止することになるに違いない。しかも、このエネルギーは平和利用への応用も可能である。ただし、原子力エネルギーを開発する前に、われわれは地球本来の持つエネルギー、例えば、火山、波、風などの力を十分に利用することを第一に考えるべきである」と。現在、太陽光発電や風力発電が実用化されつつあるが、この研究はもっとすべきだったというのだ。そして、自然界にすでにあるエネルギーを使うことは、神のご栄光を現す(神の力を示す)ことになる。
 また、エジソンは、東洋哲学や日本の文化へ深い関心を持っていた。彼のベッドの枕元には日本の歴史に関する本が何冊も置かれ、熱心な書き込みが残されている。エジソンの愛読していた日本に関する本は、『武士道』(新渡戸稲造)をはじめ、『日本体験記』(ジョゼフ・クラーク)、…など多岐にわたる。『武士道』では、日本人の精神的拠り所としての「義」や「勇」についての解説が丁寧になされている。そこで、『快人エジソン』の著者・浜田和幸氏は、以下のように述べている。「人類の未来を常に見通す努力をしていたエジソンに、影響を与えていた東洋的思想をわれわれはもう一度見つめ直す必要があろう。便利さや快適さと交換に置き去りにしてしまった、『正義』や『勇気』、『誠』や『礼』、『名誉』や『忠義』といった品性を取り戻すべきではなかろうか」と。
 エネルギーに関しては、自然エネルギーを利用することを目標とし、機械文明において人間が優位に立つため、武士道に表されている品性を人は身に着けるべきである。そして、武士道にある品性は、聖書の教え、キリストの教えが関わって構築されている。

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